婚礼の知識「結納編2」 「現在の結納」
結納の品の変遷

 結婚の形態が”婿入婚“から”嫁取婚“に変化してきた室町時代に入ると、女性側へのお礼の意味を含んだ、現在の様な結納の慣行が整ってきました。
 桃山時代、有力な武家の結納は盛大を極めました。小笠原宗長の女
(むすめ)が武田信玄に嫁いだ時は、小笠原礼道の本家と豪族との縁組であり、当代最高の豪華さだったといいます。この時の武田家の結納は、宗長へ太刀、馬、小袖が、母親へは反物、小袖、本人へは織物、小袖、帯とあります。
 江戸時代になると、武家では、幕府がしばしば婚礼の豪華を禁じ、結納では上は樽肴・熨斗・昆布・絹綿三品まで、中は樽肴絹綿のうち一品、下は樽肴ばかりとしています。一般民衆では、『婚礼世継草』の例を挙げると、紅白(紅は緋縮緬または紅羽二重など、白は白綸子[りんず]または白羽二重など)、真綿、鯣[するめ]、昆布、塩鯛、酒のほか、口祝の献立なども記されています。
 明治時代以降は、結納は便宜上金子が多くなり、結納の品目は、生活が繁雑となった影響で、ずいぶん簡略になりました。
 現代では、”結納をとりかわす“という表現も聞かれますが、結納本来の意味を考えるとこの表現は少しずれているかもしれません。先述のとおりそれは、嫁方の父母に礼物をもってその娘を迎えることを願って”結び申し入れる“ことを指すからです。

結納の意味と
日取り

 日本での結納は、二人の結婚の意志を公にして結び納め、正式な婚約の成立を意味する重要な儀式であり、男性側の誠意のしるしです。現代では、結納の品々に健康や長寿などのさまざまな願いが込められ、日本独特の美しいしきたりとして定着しています。 従来は大安、友引など吉日の午前中に行うのがしきたりでしたが、昨今ではさほどこだわらなくなっています。結納の儀式を済ませた後に、挙式などの相談を両家で行うのが一般的です。

結納品について

 昔は進物を贈る時、台の上に品物をのせ、目録を添えて台ごと進呈し、必ず酒肴(鯛、鯣[するめ]、昆布などと酒)を添えました。今日行われている結納は、この習慣を形だけ引き継ぎ、酒肴の品々を添え物として主に金銭を贈っています。
 昔、現物を持参していた結納品は、現在は水引細工のセットとなりました。基本は、熨斗(のし)、寿栄広(すえひろ)、御帯(おんおび)、松魚(かつお)、家内喜多留(やなぎだる)の五品で、これに結美輪(ゆびわ)=婚約指輪と高砂を加えた七品が多いようです。九品そろえる場合は、寿留女(するめ)、子生婦(こんぶ)を加えます。

各結納品の
意義とゆわれ

1--熨斗(のし) のしあわび、つまりあわびを延ばしたもので、不老長寿の薬とされています。進物に酒肴を添えるという古来のしきたりが、現代の熨斗に象徴的に残っています。熨斗は鶴の水引と共に贈ります。夫婦になると一生他の鶴とは添わないといわれる鶴は、千年の長寿と、愛情を表します。
2--寿栄広(すえひろ) 末広がりを表す白扇のことです。夫婦ともに末長く幸せに、という願いをこめて、一対で贈られます。亀の水引と共に贈りますが、急がず休まず、幸せを築き続けるという願いがこめられています。
3--御帯(おんおび) 昔は帯や小袖などが結納品の中心でした。現在では御帯料としてお金を包みます。いわゆる「結納金」といわれるものです。松の水引と共に贈られますが、松の葉は一年中緑であることから、長寿と永遠の若々しさを表します。
4--松魚(かつお) 鰹節のことです。“勝ち魚”ともいわれ、おめでたい儀式に使われる代表的な肴。魚料として2〜3万円を包みます。質実剛健、節度、潔白の意味をもつ、竹の水引とともに贈ります。
5--家内喜多留(やなぎだる) お酒を入れる柳の樽のことで、家の中に喜びごとが集まり、いつまでもとどまっているように、との願いがこめられています。また、酒は慶事や儀式ではつきもの。酒料として1〜2万円を包みます。春に先駆け花が咲き実を結び、忍耐の象徴とされる梅の水引とともに贈ります。
6--高砂(たかさご) 松の精とされ、松の木陰を掃き清める老夫婦の人形です。いつまでも仲良く添い遂げるようにという意味が込められています。

結納品以外には、目録(茂久録)、家紋の入ったふくさ、風呂敷、広蓋などを用意し、場合によっては家族書と親族書も用意します。

 結納は、女性の自宅で受けるのが理想です。受ける側はふくさ、広蓋と受け書を用意し、儀式の後におもてなしの食事を用意します。最近では結納やその後の会食を、式場等でとり行なう人も増えています。

参考文献/「結婚の歴史」江馬務著、「日本の礼法」小笠原清信著、「冠婚葬祭電話相談」小笠原清信著、「結納のマナー全科」篠田弥寿子

次回は、結婚式編1「日本最古の結婚式や結婚式の歴史」をご紹介します。

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