葬儀の知識10 位牌について
前回は戒名(法名)の歴史やその意義について説明しましたが、今回はその種類や名前の表す意味などについてご説明しましょう。

位牌の起源
 位牌の起源については様々な説があります。民俗学では、その原形を神祭や魂祭に用いられたと思われる昔の霊代(神・人の霊の宿るとして祀るもの)に求めています。また宗教学では、中国の儒教の影響が強く、位板、木主、神主などといって、祖先や両親の存命中の位官・姓名を栗の木に書いて神霊に祀霊を呼んだ風習から来ているとする説などがあります。おそらく、神道で現在神主が用いているような笏の形と儒家の位板の形とが融合して塔形となり、さまざまな形状の位牌が誕生したものと考えられています。
 位牌は「太平記」に祀られていた事実が記されていて、14世紀には存在していたようですが、16世紀には臨済宗の在家の位牌についての書式が成文化されており一般市民の間に広がり、江戸時代に入り、もっと広く一般化されたようです。

位牌の分類
 位牌を分類すると、大別して順修牌逆修牌とに分けられます。順修牌は亡くなった人のために造られるもので、普通位牌と呼んでいるものは順修牌のことをいいます。これに対して逆修牌は、生きている者があらかじめ戒名(法名)を付けてもらうことをいいます。また夫婦のうち一方が欠けた場合、位牌・墓に共に戒名なり法名を書き、生存している方を朱で書くこともあります。

位牌に関する習俗
位牌は、白木に墨書きされたものが祀られますが、この白木は正気を象徴する桑の木が良いとされ、これを桑主といいます。この桑主は四十九日に焼かれ、その後は黒漆に金泥書記したものを祀り、栗の木質が最上のものとされています。

過去帳・法名軸
 真宗では、死後は必ず釈尊の弟子になれることを基本にしていますから、死者の霊が位牌に止まるといった教えはありません。従って位牌はなくてもよく、父母や先祖の法名を書き連ねた法名軸や過去帳などを祀ることが多いようです。
 いずれにしても、戒名や法名を祀り在りし日のことを思い浮かべ、故人や先祖の御恩に感謝することは、私たちが伝えてゆきたい日本の美しい風習です。

《参考文献》
「仏教儀礼辞典」藤井正雄編
「仏教学辞典」法蔵館刊
「仏教大辞典」古田紹欽・金岡秀友・鎌田茂雄・藤井正雄監修
「浄土真宗のおつとめ心得」浄土真宗本願寺派東京教区青年僧侶協議会監修

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