臨終から納棺まで 4

枕 経】(まくらきょう)
 故人の体を湯水で浄める湯懽式を終え、経帷子に衣替えした御遺体には枕飾りが置かれ、枕経が始まります。
 枕経はインドから伝わった伝統的な儀式ですが、日本では、江戸時代のキリスト教禁止の政策上から、死体改め、の意味を持たされたため広くこの儀式が定着しました。枕経の意義は、これから続く一連の死者儀礼にあたり、「どうぞ安らかな死後の世界に落ち着いて下さい」と遺族が願う序章的な儀式です。また、例え遺族が覚悟をしていたような場合でも、かなり心は動揺しているはずですから、この枕経で心を落ち着かせ、「これからの葬送の儀式に真心を込めて臨みます。」という遺族の宣誓の意味も含まれています。この枕経は、地域によっては、通夜と一緒に行われることもあります。

忌中札】
 簾を裏返して入り口にたらし、忌中と書いた白紙を張るのが忌中札(真宗では還浄といます。)の一般的な用いられ方ですが、現在では簾は用いず、入り口に札を張るだけのしきたりに簡素化されています。
 忌中、すなわち喪に服すと言う意味は、死が穢れであると言う観念が古来よりあり、遺族が喪に服し喪に籠るということの中には、死者の復活を祈ることや、死体の変化を見て死を確認することや、死者と添い寝することによって相続人が死者の霊力を受け継ぐことなどの意味があるとされています。また疫病などの多かった時代には、日常生活から遮断し、集団生活から隔離することによって死忌の穢れや死霊の災いを他に及ぼさぬよう、守り防ぐ目的もあったと考えられています。
 また、忌中には、神棚は、白紙を張り、死の忌の穢れを防ぐ風習があります。これらを取り除くのは忌明けの行事で、地方によっては神主などに頼んで祓い清めてもらう所もあります 

参考文献
「仏教学辞典」 多屋頼俊・横超慧日・舟橋一哉・藤田宏達編
「仏教葬祭大辞典」 藤井正雄・花山勝友・中野東禅編
「日本仏教基礎講座5 浄土真宗」 早島鏡生・坂東性純編

納 棺】

枕経が終わると「納棺」になります。これには身内の者があたり、生前愛用していた品などが一緒に収められます。現在では火葬ですから、不燃物は入れないのが好ましいとされています。この時は蓋に釘は打たず、そのまま蓋をし、棺の上に棺掛(正式には七条袈裟と呼ばれる布)をかけ祭壇に安置することとなります。

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