葬儀の知識8 戒名の歴史意義について
仏教式のお葬式をすると、故人には生前の名前とは違った名前が付けられます。この名前を「戒名」もしくは「法名」と言います。この戒名とか法名というのは、いったい何の意味でつけられるのか知っている人は意外に少ないのではないでしょうか。今回からは2回にわたり、「戒名(法名)」の意味や種類について述べて参りましょう。

戒名・法名はできるだけ生きている内に頂戴したいものです。
 
戒名は本来、灌頂(仏門に入る人の頭上に水を注ぐ儀式)、得度(悟りの世界にはいること)、授戒して仏門に入った者に与えられるものでした。従って戒名は生存中に与えられるものでした。現在では、仏式で葬儀を行い、仏弟子になるという理由で戒名を与えていることから、死者の名前であると一般的に思われていますが、先述した「授戒」を探ってみると、戒名をもらうことの大変さが分かります。
 授戒は、仏教徒としての生活規範を守ることを誓約し、宣言する儀式のことで、「戒」はその規範を示すものです。その儀式は、在家・出家、男女の別、時代や地域によって異なりますが、三帰戒、五戒、あるいは十重禁戒、円頓戒などがありますが、例えば「五戒」には

1.不殺生(生きたものに危害を与えたり殺したりしないこと。)
2.不偸盗(盗みを働かないこと。)
3.不邪淫(夫以外の男、妻以外の女と交わらないこと。)
4.不妄語(うそをつかないこと。)
5.不飲酒(お酒を飲まないこと。)

が規範とされていて、十重禁戒では、これに5つの規範が加わり、円頓戒などではさらに厳しさは増します。このように、戒名を受けることは、「わたしは、お釈迦様の教えに従い、戒律を守ります。」と宣言するとともに、仏教徒として認められることを意味し、以前の仏教の世界では大変だったようです。

浄土真宗は「法名」と呼びます。
 
浄土真宗では戒名のことを「法名」といいます。戒名は、授戒して戒律を守っている人につけられるものですが、戒律を持たない浄土真宗は、授戒の儀式はなく、帰敬式(おかみそり)を受けると「釈○○」という法名をつけていただけることになります。

《参考文献》
「仏教儀礼辞典」藤井正雄編/「仏教大辞典」古田紹欽・金岡秀友・鎌田茂雄・藤井正雄監修/「浄土真宗必携」浄土真宗本願寺派教学振興委員会編/「仏教おもしろ百科」春秋社編集部編/「仏教学辞典」法蔵館刊/「漢語林」鎌田正・米山寅太郎著

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